AIでTシャツデザインを作る時代
画像生成AIの進化により、デザインスキルがなくてもTシャツの柄の案を短い時間で出せるようになりました。ただし、画面で見てきれいな画像と、Tシャツに刷ってきれいに出るデータは別物です。AIで作った柄が印刷の段階でつまずく原因は、ほぼ「大きさ(解像度)」「背景」「色数」の3つに集まります。この記事では、その3つを数字で確認できるようにまとめました。
AIデザインの基本的な流れ
- テーマを決める — どんなデザインにしたいか、キーワードを3〜5個書き出す。
- 刷る場所と大きさを決める — 胸ワンポイント(縦横10cm以内)か、背中・前面のA4以内かで、必要な画素数が変わる。
- AIツールでデザインを生成 — プロンプトを入力して複数パターンを出力。
- 候補を選んで調整 — 生成された画像から気に入ったものを選び、崩れた部分を直してから拡大する。
- プリント用データに変換 — 背景透過のPNG形式で、刷る実寸で300dpi以上になるように書き出す。
出力サイズで刷れる大きさが決まる
preTTy の 入稿データガイド では、PNG・JPGは「プリントする実寸で300dpi以上」を推奨しています。センチに直すと、必要な画素数は次のとおりです(1インチ=2.54cm で計算)。
| 刷る大きさ(見積もり画面の区分) | 実寸 | 300dpiに必要な画素数 |
|---|---|---|
| ワンポイント | 縦横10cm以内 | 1,181×1,181px |
| A4以内 | 210×297mm以内 | 2,480×3,508px |
一方、生成AIの出力サイズはツールや設定で変わります。たとえば OpenAI の 画像生成APIのガイド は、推奨サイズを1024×1024(正方形)・1536×1024(横長)・1024×1536(縦長)としています(2026年9月26日確認)。これらを刷ったときの大きさを計算すると次のようになります。
| 出力サイズ | 300dpiを保てる大きさ | A4以内いっぱいに広げたときの解像度 |
|---|---|---|
| 1024×1024 | 8.7×8.7cm | 約124dpi(21×21cm) |
| 1536×1024 | 13.0×8.7cm | 約186dpi(21×14cm) |
| 1024×1536 | 8.7×13.0cm | 約131dpi(19.8×29.7cm) |
推奨サイズのまま書き出した画像で300dpiを保てるのは、胸ワンポイント程度までです。1024×1024を10cm角のワンポイントに使っても約260dpiで、目安をわずかに下回ります。背中や前面にA4いっぱいで刷るなら、アップスケーリング(拡大処理)で実寸2,480×3,508px以上にするか、線だけでできたロゴならベクター化するのが前提です。拡大すると輪郭は滑らかにできますが、崩れた指や読めない文字も同じ倍率で大きくなるため、直すのは拡大の前です。崩れの扱いは AI画像の相談フロー、清書と描き起こしの費用の線引きは AIデザインの清書料金 にまとめています。
背景透過は書き出しの形式で決まる
プロンプトに「背景透明」と書いても、JPEGで保存すると透明な部分は残りません。JPEGは透明を持てない形式だからです。上の OpenAI のガイドでも、透明な背景は background を transparent に指定したうえで、PNG か WebP で出力するよう書かれています。入稿データガイドのとおり preTTy は透過PNGに対応しているので、書き出したら画像編集アプリで背景が抜けているかを確かめてから送ってください。背景の白が残ったままだと、色の付いたボディでは四角い白地まで柄として扱われます。
色数でプリント料金が変わる
AIが出す画像は、陰影やグラデーションを含む多色になりやすいのが特徴です。preTTy の自動見積もりでは、ベタ塗りの色で刷る普通色(ラバー)は加算0円ですが、方式ページのとおり普通色は写真やグラデーションの再現が苦手なので、陰影やグラデーションを残すならフルカラー(白・淡色ボディ向け)かDTF(淡色向け・濃色向け)を選ぶことになります。同じ柄を前面A4以内に刷った場合の実額です(5.6oz 00085-CVT・20枚・税込。総額は東京都あての送料920円込み)。
| 方式 | 向くボディ | 1ヶ所あたりの加算 | 1枚あたり | 20枚の総額 |
|---|---|---|---|---|
| 普通色(単色のみ)1色 | 白・カラーとも | 0円 | 1,853円 | 37,980円 |
| フルカラー | 白・淡色 | 330円 | 2,183円 | 44,580円 |
| DTF(淡色向け) | 白・淡色 | 880円 | 2,733円 | 55,580円 |
| DTF(濃色向け) | 黒・ネイビーなど濃色 | 1,100円 | 2,953円 | 59,980円 |
AIの絵を陰影やグラデーションを残したまま刷ると、1色のベタ塗りに描き直した場合より20枚の総額で6,600〜22,000円高くなります。1色で表現できる柄を最初から狙うなら、プロンプトに「1色のシルエット」「線画」「single color」のように色数を書いておくと、普通色で刷れる形になりやすく、輪郭もはっきりするので拡大にも強くなります。逆に写真のような質感が主役なら多色が前提なので、ボディを白か淡色にしておくと、黒ボディでDTF(濃色向け)を使う場合より1ヶ所あたり770円安く収まります。
プロンプトのコツ
上の3点を踏まえると、プロンプトで先に決めておくべきことは「背景」「色数」「文字の扱い」です。
- 「Tシャツ用デザイン、背景透明」と指定し、書き出しはPNGにする
- スタイルを具体的に指示(例:ミニマル、レトロ、ポップアートなど)
- 色数を指定する — 1色で済めば、上の表のとおり加算0円の普通色で刷れる
- 文字・テキストの生成は苦手なAIが多いため、文字は後から正しいフォントで入れる
AI生成デザインの注意点
- 商用利用が許可されたツール・プランを使うこと
- 既存のブランドロゴや有名キャラクターに似たデザインは避ける
- 生成画像の解像度が足りない場合は、崩れを直してからアップスケーリングツールで拡大する
文化庁の資料「AIと著作権に関する考え方について【概要】」(令和6年4月)は、AIで生成した画像を公表したり、その複製物を販売したりする場合も、通常の著作権侵害と同じく既存の作品との「類似性」と「依拠性」で判断されると説明しています。同じ資料は、簡単な指示で生成ボタンを押しただけのものは著作物に当たらないと考えられる一方、人が創作的な加筆・修正を加えた部分には著作物性が認められる、とも整理しています。チームやお店のロゴとして長く使う柄なら、AIの案をそのまま使うより、人の手で描き直した部分を持たせておく意味があります。使ったサービスごとの規約の違いなどは 生成AI画像の著作権 で詳しく扱っています。
柄ができたら、刷る場所と方式を選んで実額を出すと、1色と多色の差をその場で比べられます。