最初に — 権利の確認は注文する側の責任
オリジナルTシャツの著作権トラブルは、デザインが仕上がった後ではなく、素材を集める段階で生まれます。preTTy のご利用ガイドの注意事項には「ご提出デザインが第三者の権利侵害となる可能性がある場合、当店は制作を中止することがあります」「権利侵害に起因するクレームや賠償対応は、ご注文者様にてご対応をお願いいたします」とあり、取引を中止する場合の1つめに「著作権・肖像権侵害が明らかなデザイン」を挙げています(ご利用ガイド)。権利の確認は注文する側が行い、問題があれば制作が途中で止まる、というのが前提です。この記事では判断に使える条文と規約を示し、最後に注文前の判断フローにまとめます。
著作権法の条文 — Tシャツ作りに関係するもの
条文は e-Gov 法令検索の著作権法(昭和45年法律第48号)で確認できます(e-Gov 法令検索:著作権法)。著作権は登録しなくても作った時点で発生し(第17条第2項)、イラストなどの美術の著作物も写真の著作物も対象です(第10条)。そのうえで、Tシャツ作りで判断が分かれやすいのは次の3点です。
| 条文 | 書いてあること(要点) | Tシャツ作りでの意味 |
|---|---|---|
| 第30条(私的使用のための複製) | 個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内で使うことを目的とするときは、「その使用する者が複製することができる」 | 例外になるのは、使う本人が複製する場合。印刷を業者に頼むと、複製するのは業者になる |
| 第51条・第53条(保護期間) | 原則は著作者の死後70年。法人など団体名義の著作物は公表後70年 | 古いキャラクターでも、企業名義なら公表から70年は保護される |
| 第119条(罰則) | 著作権を侵害した者は10年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金、またはその併科。私的使用の目的で自ら複製した者は除く | 除外されるのは「自ら」複製した場合だけ |
第30条の例外は、使う本人が私的な範囲で使うために複製する場合の話です。条文の言葉どおりに読むと、Tシャツへの印刷を業者に頼む場面は「家で着るだけだから大丈夫」とは言えません。業者も複製の当事者になるので、権利がはっきりしない素材は注文の前に確認しておく必要があります。個別の事情で判断が分かれるときは、権利者や専門家に確認してください。
有名人の顔・似顔絵 — パブリシティ権の判例
写真や似顔絵に写っている人にも権利があります。最高裁判所は、ピンク・レディーの写真が週刊誌に使われた事件の判決(平成24年2月2日 第一小法廷、平成21年(受)第2056号)で、肖像などが持つ顧客吸引力を排他的に使う権利を「パブリシティ権」と呼び、無断使用が違法になる場合として「肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し」「商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し」「肖像等を商品等の広告として使用する」など、専ら顧客吸引力の利用を目的とする場合を挙げました(裁判所 裁判例検索)。芸能人やスポーツ選手の顔写真・似顔絵を大きく刷ったTシャツを売るのは、この類型に近い使い方です。販売しない場合でも、写っている本人の了解を取らない使い方は避けてください。
使えるもの・使えないもの
既存のアニメ・漫画・ゲーム・映画のキャラクター、企業やブランドのロゴは、権利者の許可がない限りTシャツに使えません。ロゴは著作権に加えて商標権で守られていることが多く、名前や形を少し変えて似せたロゴも問題になりえます。反対に、次のようなものは確認の手間が少なく済みます。
- 自分たち(クラス・チーム)で一から描いたイラストや文字
- 自分で撮った写真(写っている人の了解を取ったもの)
- 保護期間が終わった作品(第51条・第53条の期間を確かめたもの)
- 利用規約でTシャツへの使い方が認められている素材・フォント(次の節)
フリー素材とフォントの規約 — Tシャツに関係する条項
「フリー素材」は無料で使えるという意味で、何に使ってもよいという意味ではありません。よく使われる素材サイトとフォントのライセンスについて、Tシャツに関係する条項を公式ページで確認しました(2026年9月26日時点)。
| 素材・ライセンス | Tシャツに関係する条項(公式ページの記載) | クレジット表記 |
|---|---|---|
| いらすとや | 個人的にTシャツを作るのは、イラストの印象を損ねず商用目的でなければ問題なし。商品では「イラスト自体に商品価値を置いたもの」は加工の有無にかかわらず不可で、例に「イラストが商品の大部分を占めるシール、Tシャツ、キーホルダー」を挙げる。商用は1つの制作物につき20点までは無料で、それを超える点数は有償 | 不要(入れる場合は「いらすとや」) |
| Pixabay | 手を加えず実質的にそのままの形でコンテンツを販売・配布すること(デジタル・物理のどちらも)は不可。商標・ロゴ・ブランドが写ったコンテンツは、販売する商品に印刷できない | 不要 |
| Unsplash | 大きく手を加えずに画像を販売することはできない | 不要 |
| SIL Open Font License(OFL) | ロゴ・ポスター・Tシャツなどのデザインに使ってよく、追加の許可は不要。フォント自体を単体で販売することはできない | 不要 |
クラスTシャツのように販売しない使い方なら、いらすとやは個人的な利用として認めています。一方、Tシャツを販売するなら、イラストや写真が主役になる使い方は各サイトの規約で制限されます。どこまで手を加えれば「そのままの形」でなくなるかは各サイトの判断なので、販売するTシャツの主役は自分たちで描くのが確実です。フォントは、OFLのように条件がはっきりしたもの以外は、配布ページの利用規約でグッズへの使用を確かめてください。
判断フロー — 注文前に上から順に確認する
- その絵・写真・ロゴは誰が作ったか:自分たちで一から作ったなら 3 へ。他人や企業が作ったものなら 2 へ。
- 使ってよい根拠があるか:素材サイト・フォントなら規約でTシャツへの使い方が認められているか、キャラクター・ロゴなら権利者の許可があるかを確かめる。根拠が無ければ使わない。
- 人の顔や似顔絵が入っているか:入っているなら、写っている本人の了解を取る。取れない人は外す。
- 販売するか、配るだけか:販売するなら、規約の商用の条件(点数・加工の程度・商品への使用)をもう一度確かめる。
- 迷う素材が残ったら:入稿前にLINEで相談する。権利侵害が明らかなデザインは、制作を中止する対象になります。
よくある質問
AIで生成した画像は使えますか?
生成AIの画像の扱いは、生成の仕方や元になったデータで判断が変わります。Tシャツに使う前に確かめる点は AIデザインをTシャツに使っていい? にまとめています。
学校名や校章を入れたクラスTシャツは作れますか?
校章や学校のロゴは学校(設置者)が管理しているものなので、入れる前に学校に確認してください。学校名を文字で入れるだけでも、行事で着る場合は学校の決まりを先に確認しておくと安心です。
有名なロゴをパロディにしたデザインは?
元のロゴが分かるように似せる以上、元の権利者の権利に触れるおそれがあります。preTTy では権利侵害のおそれがあるデザインは制作を中止することがあるため、パロディは避けて自分たちの図柄で作るのが確実です。