本記事は、よくある相談を再構成した架空のモデルケースです(特定の受注実績ではありません)。質問の流れと判断基準は preTTy が実際の相談で使っているものをそのまま公開しています。
この記事で分かること — 事例解説との役割分担
「カフェを開店するので、オープニングにスタッフで揃える10枚を作りたいんですが…」という相談を受けたとき、preTTy が確認している 5つの質問 と、それぞれをなぜ聞くのか を見せる記事です。
同じ飲食・店舗系の案件でも、記事の役割は分かれます:
- 事例解説(商店街ハロウィン120枚) のような記事 — 終わった案件を分解して学ぶ 記事
- この記事 — 相談の途中で何を確認しながら決めていくかを見せる 記事
FAQや手順書ではなく、「これくらい曖昧でも相談していいんだ」 と感じてもらうことが目的です。まだ何も決まっていないけれど一歩踏み出したい方向けに書いています。
LINE相談のスタート地点
モデルケースの最初のメッセージはこんな内容です:
「来月カフェを開業予定で、開店日にスタッフで揃えるTシャツを10枚作りたいです。素材や印刷方法は全然詳しくないんですが、予算は1枚1,500円くらいで考えています。デザインはロゴ(AIデータあり)をオレンジ1色で胸に入れたい、くらいしか決まっていません。10枚だけでも大丈夫ですか?」
最初にお伝えするのはここです: preTTy の最小ロットは10枚です。10枚はちょうど下限なので、そのまま問題なく作れます(自動見積もりは1,000枚まで対応。それ以上は個別相談)。
この時点で発注者側が持っていた情報は次の4点だけです:
- 枚数 10枚(下限ちょうど)
- 開店日(そこから逆算で納期が決まる)
- 予算感 1枚1,500円前後
- ロゴの入稿データ(AI形式・オレンジ1色)
素材・印刷方法・サイズ内訳・追加発注の有無は全て未確定。これが 小ロットで初めて作る方の典型的なスタート地点 です。ここから5つの質問で構成を決めていきます。
preTTy が確認する5つの質問と、その理由
Q1: どんなシーンで、どれくらいの頻度で着ますか?
なぜ聞くか: 着用頻度が素材選びの起点になるからです。週5日フル着用と、オープニングイベント限定と、月数回のイベント着用では、選ぶ素材が変わります。ドライ素材は速乾ですが普段着っぽさが出にくく、綿は着心地と見た目に馴染みがあります。頻度を聞かずに素材は提案できません。
答え: 「主にオープニング期間に着て、その後も月数回、店内イベントやSNS撮影のときに揃えて着たいです」
この答えで決まったこと: 月数回の着用なら、速乾性能より 「普段着との親和性」と「洗濯に耐える定番の作り」 を優先 → 綿の定番クラス(5.6oz帯)が第一候補。ドライは候補から外れました。
Q2: 洗濯頻度と、どれくらい長く使いたいですか?
なぜ聞くか: 洗濯耐久の要求水準で、プリント方式の候補が絞れるからです。毎日洗って何年も使うなら耐久最優先で刺繍も検討しますが、イベント中心の運用なら標準的なプリントで十分。要求を過剰に盛ると1枚あたりの追加料金が上がるだけです。
答え: 「使うときだけ洗濯します。1〜2年使えれば十分かと」
この答えで決まったこと: 耐久最優先の刺繍(+780円/ヶ所)は不要。標準的なプリントで運用に耐えるという判断 → 方式の最終決定は Q3 の表現要件へ。
Q3: デザインデータの形式は何ですか?(ベクター/画像/Canva/スマホ写真)
なぜ聞くか: データ形式と色数で、選べる方式と追加料金が変わるからです。ベクター(AI/SVG)なら制約が少なく、画像(PNG/JPG)は解像度次第、スマホ写真ならトレースから始めることもあります。ここを飛ばすと、提案した方式が入稿段階でひっくり返るリスクがあります。
答え: 「ロゴは AI データで持っています。オレンジ1色で、胸にワンポイントで入れたいです」
この答えで決まったこと: ベクター入稿・単色・胸ワンポイント → 普通色(単色)プリント がそのまま使える構成。方式の追加料金は0円で、予算面の心配が一気に減りました(詳細は次のセクション)。
Q4: 色味の「絶対条件」はありますか?(ブランドカラー完全一致必須か、近ければOKか)
なぜ聞くか: カフェはブランディングが命だからです。色の期待値を擦り合わせずに進めると、仕上がり後に「思っていた色と違う」となりがちです。色ブレ事故の事後検証で書いたとおり、原因のほとんどは事前合意の欠落です。
答え: 「ブランドカラー(ロゴのオレンジ)は決まっていますが、印刷できる範囲で近ければOKです。100%一致でなくて大丈夫です」
この答えで決まったこと: 色見本(カラーコードや実物写真)を共有してもらった上で、入稿後に仕上がりイメージ(プレビュー画像)を確認 → OKをもらってから製作 という実際のフローに乗せます。このモデルケースでは、試し刷りの現物を1枚先に作って残りを後から刷るような分割ではなく、確認をデータ段階で完結させて10枚を一度に仕上げる進め方を選びました。
Q5: 開店後、追加で作る予定はありますか?(スタッフ増員・物販など)
なぜ聞くか: 追加の可能性で「今回何枚にするか」の答えが変わるからです。preTTy の数量割引は1枚あたりの定額値引きで、枚数帯が上がると単価が下がります(1,000枚で打ち止め)。将来確実に増えるなら最初からまとめた方が総額は下がり、不確実なら下限の10枚で始めて後から足す方が安全です。
答え: 「スタッフが増えたら追加したいです。お客様向けの物販もいつかは考えていますが、未定です」
この答えで決まったこと: 確定はスタッフ分のみ・増員は不確実 → 10枚・15枚・20枚の3パターンで幅見積もり を出して、単価の変わり方を見てから決めてもらうことにしました(実額は後述)。
方式は「表現要件」で決まる — 版代という費目はない
昔ながらの「版代があるから小ロットは割高、リピートで版代無料」という説明は、preTTy には当てはまりません。版代という費目自体が存在しない ためです。かかるのは白地ウェア代+プリント代(方式・箇所数による)+送料(都道府県別)が基本で、初回もリピートも同じ計算です。
だから方式選びは初期費用の損得ではなく、デザインの表現要件 で決めます。追加料金(1ヶ所あたり)はこうなっています:
| 方式 | 追加料金/ヶ所 | 向いている表現 |
|---|---|---|
| 普通色(単色) | 0円 | 単色ロゴ・文字。常に最安 |
| フルカラー | +330円 | 多色・グラデーションのデザイン |
| DTF(淡色ウェア) | +880円 | 写真・細密な多色を淡色地に |
| DTF(濃色ウェア) | +1,100円 | 写真・細密な多色を濃色地に |
| 刺繍ワンポイント | +780円 | 高級感・耐久最優先のワンポイント |
今回はオレンジ1色の胸ワンポイントなので 普通色(単色)=追加0円。もし「ロゴをグラデーションにしたい」ならフルカラー+330円/ヶ所で、1枚1,500円の予算だと超えてくる — というように、表現の要望が方式と予算を同時に決めていきます。
10枚か、15枚か、20枚か — 幅見積もりの実額
Q5 の「増えるかもしれないが未定」を受けて、3パターンの実額を並べました。条件は最安クラスの白地Tシャツ・普通色1色・胸ワンポイント1箇所(税込・送料別)です。
| 枚数 | 1枚あたり | 本体合計 |
|---|---|---|
| 10枚 | 1,422円 | 14,220円 |
| 15枚 | 1,422円 | 21,330円 |
| 20枚 | 1,322円 | 26,440円 |
この表には見どころが2つあります:
- 10枚と15枚は単価が同じ。数量割引は10〜19枚がひとつの帯なので、15枚に増やしても1枚あたりは下がりません
- 20枚で帯が変わり、1枚あたり100円下がる。「増員が確実なら20枚まで踏む、不確実なら10枚で止める」が損得の分かれ目です
参考までに、10枚を2回に分けて頼むと本体は 14,220円 × 2 = 28,440円 + 送料2回分。20枚を一度に頼めば 26,440円 + 送料1回分。「確実に使う分」までは一度にまとめる方が得 というのが、この帯構造から出てくる答えです。モデルケースでは「増員は未定」だったので、確定しているスタッフ分+予備で10枚スタートを選びました。ご自身の条件では 10枚・15枚・20枚の3パターンを自動見積もりで試算 できます(商品・プリント位置・都道府県まで入れた実額が出ます)。
開店日からの逆算
納期は 標準5〜7営業日、特急仕上げ(+500円/枚)で3〜4営業日 です。起算はデザインデータが確定して入稿が完了してからなので、開店日が迫っている場合に先に急ぐべきは発注ボタンではなく ロゴデータと色の確定 です。仕上がりイメージ確認の往復も見込んで、営業日ベースで余裕を持って逆算してください。開店日が近い方は 特急仕上げ込みの金額を見積もりで確認 しておくと、間に合わせるための追加コストが具体的な数字で見えます。
追加発注は10枚から — 2回目が軽い理由
スタッフが増えたときの追加発注も 10枚から 受けられます。2回目が楽なのは、納期が縮むからではなく(標準納期は同じ5〜7営業日です)、仕様が全部確定済みだから です:
- 商品・カラー・プリント位置・入稿データが初回のまま使える
- 色や配置の擦り合わせが終わっているので、確認の往復がほぼ発生しない
- 単価は初回と同じ帯ルールで計算される(10枚追加なら10〜19枚帯の単価)
「いつか物販も」という構想も、同じ仕様のまま枚数だけ変えて試せるので、開業時に無理に枚数を積む必要はありません。
相談時にまだ決まっていなくても大丈夫なこと
相談スタート時に決まっている必要のない項目です。「これが決まっていないから相談できない」と思う必要はありません。
- スタッフの実サイズ — サイズ内訳は仕様を詰めながら後で確定できます
- デザインの細部 — ロゴの配置・文字の有無は相談中に決められます
- 正確な枚数 — 10枚か15枚か20枚かで迷っていても、上の表のように幅で見積もれます
- カラーコード — 「この色」という色見本や写真を送ってもらえれば、そこから擦り合わせできます
一方、開店日(納期)だけは先に教えてください。逆算工程のスタート地点になるので、ここが決まっていないと他が動けません。
よくある質問
5枚だけ作りたいのですが、10枚未満でも注文できますか?
最小ロットは10枚のため、10枚未満の注文経路はありません。スタッフが5人でも、洗い替えの予備・サイズ違い・開店後の増員分を含めて10枚で作る形が現実的で、1枚あたりの負担も数量割引の分だけ軽くなります。
版代はかかりますか?リピートすると安くなりますか?
版代という費目はありません。かかるのは白地ウェア代+プリント代(方式による追加料金)+都道府県別の送料で、初回もリピートも同じ計算です。リピートで安くなるのではなく、枚数帯が上がると1枚あたりの定額値引きが大きくなる仕組みです。
開店日が近いのですが、どれくらいで届きますか?
標準納期は5〜7営業日、特急仕上げ(+500円/枚)なら3〜4営業日です。いずれも入稿データ確定後の起算なので、開店日が迫っている場合はロゴデータと色の確定を先に済ませるのが最短ルートです。
仕上がりの色やプリント位置は事前に確認できますか?
入稿後に、デザインの仕上がりイメージ(プレビュー画像)をお送りし、確認OKをいただいてから製作に入ります。ブランドカラーの再現が気になる場合は、色見本やカラーコードを最初に共有してください。
開業準備のTODOの中で、Tシャツはどこに置くか
カフェ開業は物件・保健所・仕入れ・採用と、決めることが山積みです。その中でスタッフTシャツは、「開店日だけ決めて、あとは相談しながら決める」枠 に置いて構いません。最初のメッセージは、この程度で十分です:
「<業種>で<枚数>枚のTシャツを検討しています。使用予定は<用途>、予算は1枚<金額>円くらい、<納期 or 開店日>までに欲しいです。デザインデータは<AI/PNG/Canva/なし>で、ロゴのイメージ画像も添付します。素材や印刷方法は分からないので、ゼロから相談させてください。」
この記事の5つの質問は、送った後にこちらから順番に聞いていきます。曖昧なまま送って大丈夫です。LINEで相談を開いて、開店日だけ書いて送ってください。